1991年ヨーロッパアルプスで人類の歴史を塗り替える大発見が ありました。氷河の中から冷凍状態のミイラが発見された。アイスマンと名付けられたミイラは、調べてみると5300年前の古代人のものでした。世界 最古の冷凍ミイラ・アイスマン。その身体には内臓を始めとするほぼ全ての臓器が手付かずの状態で保存されています。発見現場には普通なら土にかえってしま
う木や皮の道具なども全て氷づけで残っていました。20年前の発見からずっとイタリアで冷凍保存されてきたアイスマン。アイスマンの身体を完全に解凍し、いたる所からサンプルを回収して徹底的に調べたのです。神経や脳、感染 症などの専門家を含む24人の特別チームが編成され、全体の指揮をとるのはミイラ研究の世界的権威アルベルト・ツィンク博士です。取り出された貴重
なサンプルは合計149点にのぼりました。
(アイスマンとは?)
分析はアメリカ・ボストンで行われました。研究者が注目したのは骨から取り出したDNA。アイスマンの瞳は茶色、髪も茶色、肌は典型的なヨーロッパの肌で 中間的な白色をしていたことが分かりました。身長は160cm、体重50kg、46歳前後で筋肉質の身体。さらにアイスマンが様々な病気に悩まされていた
可能性があることも分かりました。その一つが動脈硬化。アイスマンの遺伝子には動脈硬化をおこしやすい特徴がありました。また、乳糖不耐症という乳成分の 一種を消化できずお腹を下してしまう体質だったことも分かりました。さらに、アイスマンに近い遺伝子を持つ人は既にアルプスにはいないことも分かりまし
た。そのかわり、アルプスから遠く離れた地中海のサルディーニャ島とコルシカ島にアイスマンと近い遺伝子の人々がいることが判明。
(アイスマンはどんな暮らしを?)
アイスマンが発見されたヨーロッパのアルプス地方は人類最古の文明と言われる4大文明が栄えた場所から随分離れた場所にあります。こうした地域の人々は文 明とは程遠い暮らしを営んでいたとこれまで考えられてきました。ところが、今回のアイスマンの研究でその常識を覆す事実が分かってきました。その手がかり
となったのがアイスマンの胃から取り出された重さ200gを超える塊。アイスマンが死の直前に食べたものです。分析したのはアルベルト・ツィンク博士。顕 微鏡で詳しく調べると動物の脂肪、動物の毛が見つかりました。アイスマンは様々な動物を食べていたのです。中でも多く見つかったのはアイベックスというヤ
ギのもの。他にも鹿やうさぎの肉の痕跡が見つかりました。胃の内容物からは動物だけでなく植物も発見されました。詳しく調べるとハーブの痕跡が。5300 年前の人々が空腹を満たすだけでなく味や香りを気にして食事をしていた可能性が出てきたのです。また胃のサンプルからは小麦も発見されています。しかも水
を使って加工された痕跡がありました。さらにアイスマンの腸からは煤の粒子も発見されました。この事実は小麦を水で捏ね火で焼いたパンが存在していたこと を示しています。アイスマンはパンを食べていたのです。アルプス一帯の豊かな暮らしはアイスマンの持ち物からも伺い知ることが出来ます。その最たるものが 胴の斧。純度は99.7%。高度な精錬記技術があったことが分かります。
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「死して屍・・・」状態の別名:イサカでした。
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